学会長挨拶

ご挨拶

大阪大学大学院医学系研究科環境医学 祖父江 友孝

 産業保健領域の業務の中でがん検診は、メンタルやメタボに比べてそれほど時間をかけて対応はされていないと思います。私も、大阪大学環境医学教室に10年前に赴任して以来、企業の産業医を担当して、そのように実感します。一方、がん検診は、がん対策の中でがん死亡率を下げる手段として一定の効果が確認されており、これまで市町村を主体とするがん検診が、対策型検診の中心として実施されてきました。しかし、市町村の行うがん検診の受診者の多くが70歳以上の高齢者となっている現状を見ると、がん検診のターゲットの中心は職域ではないかとする考えが、がん対策関係者の中では広まってきています。
 市町村が行うがん検診が健康増進法に基づく事業であるのに対して、職域のがん検診には根拠法が存在しないことが根本的な問題ではありますが、2018年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が厚労省から発出されて以来、産業保健関係者においても若干関心が高まる気配が感じられます。私は、大学卒業以来、一貫してがんの疫学に取り組んできましたが、がん検診の有効性評価・精度管理には特に深くかかわってきました。そこで、本学会のテーマを「職域におけるがん検診」とさせていただきました。

 予防や検診は、やればやるほど良いと考えておられる方が多いと思いますが、そんなことはありません。治療と同じように、不利益を被る人が一定割合存在します。長年がん検診にかかわってきて、がん検診による不利益を理解することが、がん検診を進めるに当たって最も重要な点と感じています。基調講演では、そのことをお話ししたいと思っています。シンポジウムでは種々の立場の方々加わっていただき、職域のがん検診について議論を深めたいと思います。また、教育講演では、忽那先生にコロナの最新情報について講演していただきます。

 本学会は、前々回は中止、前回はオンライン開催となり、多くの方が現場での開催を期待されていると思います。開催時の状況はまだ予想困難ではありますが、現場での開催を前提に準備を進めたいと思っています。今回のテーマに関心のある数多くの方々に参加していただきますようお願いします。

2022年3月吉日

                              第62回近畿産業衛生学会
                              大会長  祖父江 友孝
                              (大阪大学大学院医学系研究科環境医学)

学 会 長:祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科環境医学 医師)
事務局長:北村 哲久(大阪大学大学院医学系研究科環境医学 医師)
顧  問:丸山 総一郎(兵庫産業保健総合支援センター 医師)
顧  問:竹下 達也(和歌山産業保健総合支援センター 医師)

実行委員:(50音順)

東 賢一(近畿大学医学部環境医学・行動科学教室 准教授)
伊藤 正人(パナソニック健康保険組合健康管理センター 医師)
井上 雄太(徳島大学大学院医歯薬学研究部 看護師)
喜多村 祐里(大阪市こころの健康センター 医師)
小松 雅代(大阪大学大学院医学系研究科環境医学 保健師)
査 凌(大阪大学大学院医学系研究科環境医学)
鈴木 純子(大阪産業保健総合支援センター 保健師)
長見 まき子(関西福祉科学大学健康科学科 公認心理師)
中山 邦夫((株)ブリジストン 医師)
馬場 幸子(大阪母子医療センター母子保健調査室 医師)
平田 真以子((株)クボタ健康経営推進部 保健師)
福田 早苗(関西福祉科学大学健康科学科 衛生管理者)
益江 淑子(株式会社健康管理室 保健師)
村木 功(大阪大学大学院医学系研究科環境医学 医師)
村田 理絵(京都工場保健会 保健師)
森口 次郎(京都工場保健会 医師)
安田 恵理子(大阪歯科大学口腔衛生学 歯科医師)